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【Philter poisoning】
2007.03.04 (00:00) 書物trackback(0)comment(0)
煙草だって酒だって、結局その甘美な快楽のための手段でしかない。
そう思うのならこの口付けだって、愛などとは全くの別物である。



【Philter poisoning -魔法のクスリ中毒-】


(今回はNPC採用のhmなので、覚悟のある方のみどうぞ。)



群がるモンスターたちをどうにか薙ぎ払い最後の1匹を倒した俺は、
夕闇が近づく暗黒の森を後にし一番近い街へ戻る途中、
一息吐こうとズボンの尻ポケットに手を伸ばして顔をしかめた。

ポケットには捻って突っ込んでおいたままのソフトタイプの白い箱。
そういえばさっき、最後の一本を引き抜いて火をつけたような記憶がある。

憂さ晴らしに一本、どうにも咥えないと気がすまない。
特に、こんな大量の敵を相手にした後は余計だ。

持っていた荷物を全てひっくり返してみる。しかし、そこに目的のものはない。
どんなに引っ掻き回しても白い箱が転がってくることはなかった。

どうやらあれが元の世界から持ち込んだ最後の箱だったようだ。

―――くそ。

誰に言うでもなく口から零れた悪態は、それだけで体中の体力を奪う。
一服できないだけでこんなにも参るなんて、ソートー毒されてる。

「あぁ…、だから止められないのか」

そう、自分自身で慰めてみても、この疼きが止むことはない。

小さく舌打ちすると踵を返し、
多くの商人が集まるであろう島の中心部へと移動した。



**********



やってきた街は確かに大都市だった。
整備された街路は見栄えの良い石畳で、それだけでこの街の品位が伺える。

荷物を預けておくための銀行もある、
成功率は確実ではないが一端の合成士も常勤している、
連日イベント事で賑わいを見せている式場もあれば、
明らかに余った資金で建設されたのであろう、
おざなりな作りの野外ステージまである。
どういった訳だか街の外れにはたこ焼き屋の屋台まで設置されているというのに。

何故かこの街には「煙草」の文字が全く見当たらなかった。
この街は禁煙活動でも盛んなのだろうか。「酒」の文字ならあるくせに。

立ち寄った店でアルバイトをしていた赤髪の女の子にそれとなく尋ねてみると、

「あぁ…この島にはそういったものは置いていません。」

と笑顔で返されてしまった。

…ほとほと、こういった世界はオトナに優しくない。

その他にも2,3件回ってみたが結果は変わらず。
どうやら本当にこの島には「煙草」という品物は皆無のようだ。

これだけ人がいるというのに、誰も不満を訴えるヤツはいないのか。

そもそもこんなバーチャルな世界では欲などかかないのだろうか。

まぁ…律儀に兎耳やら尻尾やらつけて狩りや穴掘りに勤しんでいるヤツらだ、
欲という欲がお宝ゲットに向けられているという線もなくはないが。

…なんで俺は、こんなところに来ちまったんだろうなぁ。


そこまで考えて一度、随分と体力を消費していることに気付き、
近くの石段に腰を下ろす。そういえば昨晩からものを口にした覚えがない。

先程半ば自暴自棄に陥って購入した高級洋酒なるものを取り出す。
定価だったか高額だったかはこの際気にしないことにする。

瓶の口を咥えると、大して味わいもせずに一気飲み。
喉を焼く様な刺激に思わず咽る。こんな世界にある割に度数は高かったようだ。

空腹に染み渡る酒気に顔を歪める。
酒には特に弱い方ではなかったが、これには些か参る。

…ホント、何やってんだろうなぁ。

自己嫌悪ついでに石段に寝転がる。何だか睡魔まで襲ってきた。
もうこうなりゃ他人の目なんか気にしていられるか。

ジャケットが汚れることが一瞬頭を掠めたが、
結局俺はその意識さえも手放すことにした。

その瞬間。


「往来で大の大人が酔っ払うとはあまり関心しないな」

ふと、澄んだ声が降って来た。

ゆっくりと目を開くと何とも目を引く煌びやかな衣装を身にまとい、
顔を半分くらい覆い隠す程の蝶仮面を装着した男が目の前に立っていた。

一瞬、幻覚かと思える程の出で立ちだったが、
その姿には幾度か見覚えがある。

俺は自由の利かない体をやっとのことで起こし、
その場に胡坐をかいて男を見上げる。
銀色の髪が夕焼けに反射して何とも綺麗な色をしていた。

「…あんた見たことある。この世界じゃ結構お偉いさんだろ」

確か初めてこの世界に足を踏み入れた日、説明を受けた気がする。
このゲームを作り出した男の異母兄弟だとか…何だとか。

「この世界だけではないがな。それがどうかしたか」

男は至極不機嫌そうだったがそれだけ訂正して返した。
見た目に反さずプライドが高いらしい。
目立ちたがり屋とは得てしてそういうものである。

その言葉を聞き「ふぅん」と値踏みするように視線を巡らせてから、
鉛の様に重い体をどうにか起き上がらせて男と対峙した。

おっと、よろけて肩に手をかけてしまったが…まぁ、脅すなら丁度いい距離感だ。
案の定軽蔑はすれど泥酔した人間を突き飛ばすようなことはしない男だった。

凭れ掛った相手に顔を近づけ、ようやく聞き取れるくらいの声で囁く。

「なぁ…俺は今、愛する甘美な麻薬が手に入らず病んでいる。
 一冒険者の願いを叶えてやるのも経営者のおシゴトなんじゃねェの」

男は銀色の髪と同じ色をした眉を綺麗に歪め、

「…断る。なぜ私が一個人の願いを聞いてやらねばならない。
 それに私は経営者ではない。君と同じ扱いに過ぎないのだから」

そう理屈っぽく言葉にした。少し、面白くない。

「VIP待遇で変装を免除されてるって聞いたけど?
 それって十分経営者に口効けるんじゃないのか?」

懲りることなく詰め寄る。
表情を読み取ることが出来ない蝶仮面が気になって手をかけようとすると、
その長く伸びた指先で弾かれる。お気に入りらしい。

「私にそんな口が聞けるくらいなんだ、自分で言いに行けばいい」

そろそろ業を煮やしたのか酔っ払いでさえ投げ出しそうな勢いだったが、
それでも逃がしてやる気のない俺は、その体を引き寄せる。

「…この際きっぱり禁煙したらどうだ」

一層眉間のしわが濃く刻まれる。折角の美形が、と心の中で思っておく。

「苛立ちがピークに達してまた同じ事を繰り返すだけさ」

そう、特に思案した訳でもないのに嘯く。

その後も当分の間押し問答が続いた。
プライドの高いヤツは屈しにくい…って、当たり前か。


いい加減脈のない言い争いも根気負けしそうな時だった。
太陽が完全に沈み、辺りには黒いカーテンが下りてきた様に暗黒と化した。

すっかり暗闇に視力を奪われ、触覚だけで相手を捉えるしかなく、
逃がさないようにきゅっと両手で腕を掴んでおく。

その時。

ふと、鼻の頭が軽くなったかと思えば、
カチャリと金具音が小さく響き、
ようやくサングラスを外されたのだと認識したときには、

文字通り、口唇を奪われていた。

それが相手の口唇なのかすらも曖昧な感覚だったが、
その先から生暖かい舌が現れるのだから口以外の何物でもない。

「―ん…んッ!」

肉厚のある舌に口内を侵され、一時呼吸の仕方を忘れる。
押し返そうにも未だ抜けきらない酒気に力が入らない。

そうこうしている間にも舌は歯茎を這い、
拒否を訴えている己の舌さえ絡めとってゆく。

「ふ…んぅ…」

その後も口内を十二分に荒され、存分に愛撫され、
窒息寸前というところで…ようやく開放された。

「ッは…はァ……」

息苦しさに嗚咽を漏らしながら酸素を思いっきり肺に送り込む。
あぁ…無垢な空気というはこんなにも美味いものだったのか。

口元を思い切り拭い去ってから、恨めしそうに相手を見やる。
暗くて表情は分からないが、多分、勝ち誇った様な顔をしているに違いない。

男は悪びれる素振りなど見せるでもなく、また弁解するでもなく、

「これに懲りたらもう煙草なんて吸わないことだな。
 まぁ、禁煙に付き合えというのなら話は別だが」

と言い捨てた。

それでもなお睨み付けている俺の視線に気付いたのか、

「そんなに恨めしいか?…まさか、初めてではあるまい?」

酷く楽しげな声で尋ねてくる。

柔らかな手が頬を掠めたところでようやく覚醒し始めた体でそれを弾くと、
脚に力を入れて立ち上がり、相手と再び対峙した。

先程は暗闇を心底恨んだが、今は正直助かった。
多分、今自分はとても情けない顔をしていることだろう。
まぁ…その原因を暗闇が生んだとするならばやっぱり恨んでおくべきか。

「次会ったらぜってーぶっ飛ばす」

などと、今時悪役でも言わない様な捨て台詞を吐いて。
暗闇が暗闇である間にその場を去った。

多分、とても綺麗な微笑を浮かべているであろう男を背にして。



**********



完全なる敗北。

しかも、まさかあんな手口で。


怒りで体の震えが止まらない。
悔しさで頭が爆発しそうだ。

何が原因だったのか。
元を辿れば俺をここまで堕落させた甘美な麻薬か。

…いや、「煙草」なんてもんは、唯のオモチャに過ぎなかった。
先程まで体中を支配していた疼きは、また違った色みを見せている。

この疼きは、もうきっと、忘れることなどないのだろう。

知ってしまった。否、気付いてしまった。
もっと強烈な、それこそ骨まで溶けてしまいそうな、
最強最悪で、最も甘美な快楽―――。


「『好かった』なんて言ったら、それこそ酔狂だよなぁ…」

そう、朝靄のかかる道端で、
誰の耳にも入らぬよう、そっと、呟いた。


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